働き方改革が楽しい方向に向かわない理由

働き方改革がバズワードになってしばらく経ちます。Googleで検索すれば既にその定義的なことも下記の様に書かれていたりますよね。

働き方改革:労働時間が短縮されることで従業員の集中力が高まり、生産性の向上が期待できます。 ダラダラとした雰囲気を一新することができます。 また人材採用においても、働き方改革に熱心な企業という社会的な評価を得られるメリットがあります。

労基法自体が見直されて、色んなことが規制されたことで働き方が改善され、残業時間が減り有給休暇の取得が義務化され、時短勤務や産休育休が推進され、それを管理する業務管理系システムもビジネス面で拡大して、仕組みとしての広がりは素晴らしい現状になりつつあります。企業の求人欄も「年間休日120日以上」「土日は必ず休日」を見出しにしている企業も目立つようになりました。

働き方改革の現場で起きていること

いやいや「でも、実際はどうなんだろう?」と。企業の働き方改革の推進役の人事部・総務部は従業員から「本当に心から嬉しい!」という声はあまり聞かれないところでは…。少なからず営業職は両手放しで喜んでいないはず。「とりあえず、残業することが悪だから残業をやめよう!」「プレミアムフライデーだし早く帰らないと…。」のような空気感で、実際は仕事の量自体が変わらないので「15時に退社してスタバで仕事しとくかなぁ」みたいになります。それってどうなんだろうかと。「あれ?会社が推進する働き方改革って楽しくないし、どこでも仕事できるからエンドレスだし、逆に働きにくい改革じゃね?」と感じている人も多く、働き方改革全てを一律のルールで動かすべきか?未だ疑問が残ります。

働き方より休み方

オススメしたいのは「働き方」より、むしろ「休み方」です。「会社は休めって言うけど、そう言われてもねぇ…」と休み慣れしていない人は、しっかり休んだ実感も得られず、とりあえず有休を使って過ごすという話もよく聞きます。結局、平日に片付かなかった仕事をしないといけない。でも、せっかくの休み。休んだ実感を持ちたいところ。じゃあ、休んだ実感を持つにはどんな観点があるといいのか。

海外と日本の休み方の違い

例えば訪日外国人が観光を楽しむ様子を見て「ん?なんかワタシと違って満喫している気がする」とちょっと何か違うものを感じたことはありませんか。国(アメリカと北欧)でも違うし、人にもよりますし、旅行ツアーに参加/不参加でも違いますが、少なからず仕事は頭から離れている人が多いと思います。眉間にしわを寄せて時間に追われている様な顔をしている人はあまりいない…。それは何故か。海外では「休むために仕事をする」からです。つまり「仕事 < 休み」という構図です。

働き方・休み方に繋がるキャリア・ライフスタイルの捉え方の違い

日本人は休むことに罪悪感を感じがちです。でも欧州の人は休みを必要不可欠のものと捉えます。キャリアについても仕事だけではなく、欧州はキャリア自体を生き方・家族・自分自身の楽しみ方と同列に置きます。なので、充実につながる長期休暇の計画はかなり前から考えます。ドイツに駐在していた私の友人は、部下からの長期休暇の申請承認が日本の比じゃないと言っていたことがありました。通常、2-3週間、4-5週間の休暇も珍しくはないところ。クリスマスやイースターなどの休日は文化・歴史・宗教の違いがあるので一概には言えませんし日本が真似る必要もありませんが、欧州の方は日本人よりも休むことの土壌がしっかりできていることは確かです。

休むことへの後ろめたさ

日本人がいきなり働き方と連動した休み方をトップダウンで言われても正直難しい。なぜならライフスタイルとしての土壌がないから。会社でよく言われる休むことへの後ろめたさとして働き方改革を推進している企業でさえも現状はこんな感じで、すごく内向きな観点が多い。

  • 自分が休むことで同僚に迷惑をかけていないかな
  • 自分だけ休んでしまって同僚に申し訳ない気持ちがあるな
  • 暇だと思われてしまわないかという不安感が払拭できない
  • そもそも休む暇が作りにくい

そして、未だ根強く残っている「忙しいことがカッコいい的な雰囲気」。誰よりも早く出社して誰よりも遅くまで遅く残ることの美徳意識。それも欧米の観点で言えば、仕事の効率が悪いことやマネジメントができていないことと片付けられてしまいます。それは同質性を好む日本人にしか理解しにくいところ。じゃあ、どうしたら他人の目も多少は適度に気にしつつ、会社で自分自身の休み・仕事へのマインドを変えられるのか。

自分の休みの本質を見ること

しっかり休んだ実感を持つことが自分自身にとっての休み方改革です。自分自身の休み方を充実したものにしていくことで仕事へのマインドを少しづつ変えていくこと、そのポイントは3つあります。

  • 休日のWhat’s newを意識すること
  • 休日(GW・夏休み・お正月)と日常の休日の違いを整理すること
  • 仕事と程よい距離感に置いておくこと
休日のWhat’s Newを意識すること

何か新しい発見・経験をすることで休日の一日が充実し、しっかり休んだと感じやすくなります。大それたことではなくてもOK。例えば、新卒の新入社員は入社後すぐにGWに入りますが、GWの過ごし方次第では休み明けの仕事のモチベーションに少なからず影響が出ることが調査から分かっています。詳しくは「新入社員の自立意識と学生時代の充実感と休み方」から。GW中に地元の友達と会社の話しをすることで意外と知らなかった社会人としての情報も得られたりと充実感を感じたりするものです。休み方次第で働き方の位置づけも変わるものですね。

休日(GW・夏休み・お正月)と日常の休日の違いを整理すること

日本中が文化的に休日モードに切り替わるお正月、温かい春先に積極的な消費行動をするGW、学校も休みなので家族で出掛ける機会の多い夏休みなど、大型連休ごとに社会的に流れる空気感も違えば会社での休みやすさも変わります。全ての休みを同じレイヤーでは考えられません。また、日常の休日でも家族のイベントや趣味の非日常的なイベントもあるので、自分がどの休日をいかに過ごすのが最適かを整理することが大切です。大型連休の研究レポートは「知っていますか?10連休を構成する「A+B=休日」の法則」をご覧ください。

仕事をほどよい距離感に置いておくこと/全く遠くに置くこと

「休日に仕事のことを全く考えない人」と「休日の行動を仕事のアイデアに紐づけて創造力を磨く人」に大きく分類されます。前者は主に経営者に多く、休みをまとめて取ることで仕事への発想力が飛躍することを経験則として知っているケースです。仕事から離れる時間を作ることで広い視野を得られます。働き方としてこのような観点があると休み明けの生産性も上がりますよね。

後者(休日の行動を仕事のアイデアに紐づけて創造力を磨く人)はクリエイターに多く、集中して深く一つのことに没頭する中で、自分の創り出したいものが休日の行動により新たな観点で見つかるというものです。クリエイターと休日の関係性については「”大人(として)の学び”という休み方改革」をご覧ください。

ライフスタイルとしての休み方

働き方改革が楽しくならない理由としては「働き方」よりも「ライフスタイルとしての休み方」の土壌をいかに作っていくかが大切で、それが疎かになっているからと言えます。そして何よりも、現状のように働き方改革すべてを一律のルールで動かすべきではない。自分のライフスタイルをどうやって描いていくのか、休みをどう使って充実した休日にするのか、そして仕事に繋がるしっかり休んだという実感をどうやって培っていくのか。休みを知り、休み方からライフスタイルを考えていけば心の余裕も出て、休むことへの後ろめたさも含めた働き方改革の窮屈さも感じにくくなるのかもしれません。

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