休日珈琲コーヒー | “コーヒーを愉しむこと”をデザインした店 “イルマン堂”

朝から降り止まない雨の中、特に目的があるわけではないけれど何となく美味しい珈琲を飲むのも悪くないなぁと思う休日。ジメジメしていて何をしても心が晴れやかにならない、だって雨だから。しかも横風が強く歩くだけで靴も服も濡れるような日。でも、雨の日だからこそ能動的でなく受け身な気持ちのままで、ちょっと気持ちに陽が差すような体験ができたりすると意外に心が満たされることってありますよね。「雨=ドンヨリした気持ち」をイメージしてしまうところを「雨なのに/梅雨の時期なのに、意外といい」になれる珈琲店があったら、皆さんはどう思いますか?

今回の休日珈琲コーヒーは、東京メトロ日比谷線小伝馬町駅から直ぐ、国道6号沿いに面した場所にあるカフェ「イルマン堂」でつくられる”コーヒーを愉しめる”要素と休日の充実感につながる意外性についてのストーリーです。特に「コレをしよう!・コレをしないといけない!」というような目的もなく、気持ちの沈みがちな雨の日でも意外にいいと感じられる休日に是非、試してみてはいかがでしょうか。

お客様に”コーヒーのデザイン”を愉しんでもらう工夫

イルマン堂で淹れている珈琲はアジア、中南米、アフリカのブレンド。一口飲んで美味しいと感じたので仕入れ先を店主に聞いてみると、やっぱり!堀口珈琲からオーナーが豆を仕入れていました。こだわりの珈琲豆で美味しい珈琲を愉しめることは、入店する前の外観からも容易に察することができます。普通に店の前を歩くだけでは全く珈琲店だと気づかずに通り過ぎてしまいそうなモダンな佇まい。それもそのはず、こだわりの店舗デザインは間宮晨一千 氏によるもの。それだけでも普通の珈琲屋さんにとどまらないことを感じながら、降りしきる雨の中、外で待つこと約15分。「見た目の外観は決して大きくないけれどモダンな雰囲気、雨の日でも行列が出来ていることもあって店内は小さいがセンスが感じられる店内なのかもしれない」と想像できたのは、店から出てくる人の顔は皆、どことなく満足気な表情だったからでした。降りしきる雨の中で「雨=気持ちもドンヨリ」ではあるものの、「雨なのに意外といい経験ができてしまうのでは?」と行列の先頭に並ぶ頃には少しずつ気持ちに変化が生まれ始めていました。

店内は外とは全く別の異空間がお迎え

外の喧騒から一歩入ると中は全く違う空気感。珈琲店というと”窓ガラスから外が見える” “明るい店内” “壁面には絵画が飾られている” “ゆったり出来そうなソファがある” “店員がせかせかしている” “ビジネスマンがPCを開いて仕事している” “テラス席がある” などなど一般的にイメージするものがあります。でも、イルマン堂に入ると珈琲の香りで満たされた”ほの暗い雰囲気”にまるで異空間に入ったかのような錯覚に陥りました。注文を済ませて席に案内されると次第に”幻想的なBGM”が耳に伝わってくるのが分かります。天井を見上げると1Fも2FもRの形になっていて、無機質なデザインからは不思議と心地よさを感じてしまうようでした。自分だけの静けさのある洞窟・誰にも邪魔されることのない秘密基地のような感じでした。すぐ横で珈琲を淹れている店主の前には、瓶に入った珈琲豆が整然と並べられていて、それだけでも空気感に調和しているように見えます。

ほぼ閉ざされた空間、でも違和感が全く感じられない珈琲店

外からの光を抑えた空間。1Fは厨房、通路、2人掛けの席が二つだけ。席に座るとカードを渡されたので「何だろう?」と見るとZの文字が書かれていました。そして「皆さまには静かな空間をお楽しみいただけるようご協力ください」と書かれていました。各席にはペンダントライトの明るさを変えられる調光スイッチが備えてあり、客が好みの明るさにできるようでした。しばらくすると、注文した珈琲がテーブルに運ばれてきました。

1Fで静かに珈琲を味わいながら、珈琲を淹れている店主に声をかけて見ると気軽に話をしてくれました。この店はオープンして1週間目こそ行列ができる訳ではなかったものの、2週間目からSNSで情報が広がり一気に人気のお店になっていったとのことでした。有名になりお客様が多く入るとお客様同士が大きな声で話すことで声が壁に響き渡り静かに珈琲を楽しみにくくなるため、お店のコンセプトが保たれるように、お店側でも声が響かずにお店での珈琲の楽しみ方を知ってもらえるよう工夫されてきたとのこと。それでさっき渡されたZの文字が書かれたカードの意味が分かりました。メニューはコーヒーやお茶、SNSでも話題になっているトーストや手作りプリン、スコーン。味の美味しさは店内の空気感により更に醸成されていくものなのだと店主と話をしながら感じました。

2階も同じ空気感を演出

内装の仕上げはグレーのモールテックス。2階に上がると4人掛けが4席。こちらも照明でほの暗いまま、外の音を完全にシャットアウトし、お店の演出する空気感に浸ることができる場所になっています。例えて言えば、落ち着いたバーのようでプラネタリウムのような静けさと包み込まれるような和のテイストの店内。

意外性を感じさせることによる充実感が得られる休日

この日、外は雨。しかし店内はまるで違う雰囲気。外が雨だったことを忘れてしまうような完全に外の音・雰囲気をシャットアウトしている店内。初めて入った人にとってはきっと衝撃的なのかもしれません。リピーターとしては、衝撃はないにしてもこの雰囲気の中で珈琲をまた味わいたいと思ってしまうような場所。

単純に珈琲を飲む店でもなければ、空間演出だけでインパクトを与える訳でもない。美味しい珈琲をこの空間で味わってもらうことでコーヒーを愉しむこと自体を創り出して、それをお客様に体現してもらいたいことがしっかりと伝わってくる珈琲店、イルマン堂。晴れた日に行くのはもちろん良いけれど、「目的もなくて何となく美味しい珈琲が飲みたい」といった受動的な休日を充実して過ごすことが出来る空間でもあると思えます。

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。