地域伝統のお祭りの読む。歴史と多様性の中の獅子頭づくり

地域伝統の獅子頭を使った獅子舞

石岡や周辺地域のお祭りでは、常陸獅子(ひたちじし)と呼ばれる地域伝統の獅子頭を使った獅子舞が行われています。その獅子頭は頭に角がなく凛々しく太い眉が特徴です。獅子頭職人 櫻井光保さんは常陸國總社宮大祭(石岡のお祭り)に使われる獅子頭の修復や周辺地域への獅子頭の販売を行う、この道40年以上の職人です。

獅子頭自体で町の「顔」として差別化を図る

櫻井さんは幼少時より獅子舞の文化に触れて育ちました。石岡周辺ではお祭りが好きな人が多く、一家にひとつ獅子があるのも珍しくありませんでした。また、町内毎に獅子頭の力強さ、カッコ良さなどを表現するための色、形が違い、獅子頭自体が町の「顔」として差別化を図るものでもありました。そのような環境下で自然と獅子が好きになり、自分も欲しくて職人に教えを請い自分で製作したことから始まったと言います。

常陸獅子(ひたちじし)のこしらえ方

獅子は木組み、彫り、下張り、磨き、塗りなどの工程で作られます。他地域の獅子頭との最大の違いは、木を張り合わせる技術を使う点です。例えば、石川県等他地域の獅子頭は1本の木で作られるため、その大きさに限界があるが、常陸獅子は木(桐)を使い、パーツ毎に型をつくり貼り合わせるため、大きな獅子頭を作ることができます。一般的には1尺程度の大きさだが、常陸獅子では2尺を超えるものも少なくありません。

獅子が出来上がるまで

その後、のみやナイフで彫り、ヤスリをかけて磨いていきます。いくつもの作業工程において特に難しいのは塗りの工程で、その中でも下塗りは、獅子の肌の滑らかさが決まるため、出来上がりを左右する重要な作業となっています。納得できる滑らかさを出すためには、下塗りと磨きを何十回と重ねることもあります。塗りを重ねることで、獅子の表面は滑らかで艶のあるものとなっています。

獅子頭の本来の目的である悪魔払いのためには、鋭い目で睨みを利かせて獲物を怯えさせる必要があります。周囲を圧倒する威圧感と今にも飛びかかってきそうな怖さを伝えるため、櫻井さんは眉と頬骨の間から見える鋭い目にこだわり、表情をつくっていきます。

NPO法人常陸獅子彫刻伝修館の立ち上げ

2014年には全国的な獅子頭職人の減少を危惧して、獅子頭の文化や技術を残すためにNPO法人常陸獅子彫刻伝修館を立ち上げました。後身の指導を行うだけでなく全国から獅子頭の注文を受けています。

技術継承のために櫻井さんは、自分の生徒たちに対して、現物を見て同じように彫らせてみて、その次に彫らせる時は写真を見ながら彫らせるようにします。その理由は全て最初から最後まで自分で考えて製作してみることが本人の力になり、本当の力になるということを自分の経験から学んだから。漆の塗り方、金箔の貼り方、舌の付け方など本場の職人の下へ学びに行き、それをもとに櫻井さん自らが研究されて身につけてきました。例えば、会津の漆、輪島の漆、井波欄間の彫刻から先生からの教えなしに技術習得の努力を積み重ねてきたと櫻井さんは言います。

櫻井さんは、今でも休日には全国の獅子や地域の歴史を見て周ることが多いと言います。常に新しいことを発見できるよう感度を高く維持する。時代に合った多様な観点を常に持ち続けることこそが、数百年と続く地域の伝統的な祭りと共に歩んできた獅子頭づくりに求められることなのかもしれません。

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