もはや入手困難?作り手の想いが味になる幻の大豆 あけぼの大豆

味噌づくりに込められた「想いの深さ」

古くから日本人の食生活を支えてきた伝統食品 味噌。「味噌は医者いらず」と言われるように、たんぱく質だけでなく、発酵させ生成されるアミノ酸、ビタミン類も豊富。栄養食としても健康面で国内外から注目を浴びている。

依田哲子さんが作る味噌の味

依田哲子さんは、農協婦人部(現・JA女性部)で長く“あけぼの大豆”の味噌作りを行ってきた6人うちの1人。数十年前まで身延町では、“あけぼの大豆”による味噌作りを各家庭で行ってきたが、簡便で安い市販の味噌の普及や人口減少もあり、食卓で“あけぼの大豆”の味噌を使った料理はあるが、味噌作りの流れは以前のようになっていない現状がある。その一方で、近隣県在住者や観光客など、まだ味噌の味の魅力を知らない人は、枝豆同様に大豆自体の持つ深い甘みやサイズ、食味が他の大豆より格段に高いこともあり、一度、味噌を使うとファンになる傾向が強い。

それ故、依田さんは「作りながら実践の中で学ぶことが多いため、味噌作りに触れる機会や携わる人をもっと増やして、加工品を通じてこの町の味噌の味をもっと知ってもらいたい」と願っている。

こしらえ方

味噌作りは温度、湿度などの環境に大きく影響されることや、かつては機械の未整備による作業効率面の悪さから一定量の生産化には試行錯誤の連続だった。味噌作りはJAの毎年の販売実績に応じて、生産量が変わる。2016年は約1トンの大豆を使用し、3.7トンほどの味噌を作った。

❶あけぼの大豆を洗う

ます、収穫したあけぼの大豆を洗うところからスタートする。

❷あけぼの大豆を茹でる

洗ったあけぼの大豆をザルにあけて、給食施設にあるような大釜に入れて茹でる。
ここで少しつまみ食いをすると、凝縮された深い甘みが口の中にフワ~ッと広がっていく。

❸あけぼの大豆に麹を混ぜる

次に、茹で上がったあけぼの大豆を少し冷ましてから、麹を混ぜる作業。味噌150kg(1釜分)を作るのに、麦麹30kg、米麹10kg、大豆36kg、塩18kgの原料が必要になる。地域の知恵が生んだ”あけぼの大豆”の味噌は、白い米麹と茶色い麦麹の2種類の麹が合わさることで、まろやかなコクが生まれるのが特徴だ。

❺あけぼの大豆に塩を混ぜる

その麹と塩をまぜて十分にかき混ぜて、塊をポロポロにする。ここでよく捏ねて混ぜることが味噌の出来を左右するため、懸命にこねる。この時点で室内には、優しく甘い香りがジンワリと部屋中に漂ってくる。麹は生きている菌なので温かい。

依田哲子さんの想い

「あけぼの大豆の味噌に使う麹は隣町のものが一番、相性がいいんだよ」という依田さんの言葉からは、地域性や味自体の独自性、食生活における味噌と人の関係性の深さが感じられる。

高齢化が進み、味噌作りを行う人が減れば、蓄積していくノウハウの量や質も減っていく。
「今の子供は、あけぼの大豆を使った味噌を食べる機会自体が少ない。枝豆のように農産物をそのまま販売するのも大切だけれど、加工し付加価値の高い商品として提供することで、高収益を図るだけでなく、町民の生活、来訪客に”あけぼの大豆”の魅力を知ってもらえるようになりたい」、
そう話す依田さんの顔の表情からは、身延町の美味しい味噌作りに長年取り組んできた「想いの深さ」が伝わってくる。

地域の休日をデザインする

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