QOLを高める大人の料理の嗜み方~食事の質と人生の質~

QOLを高める大人の料理の嗜み方~食事の質と人生の質~


毎日の行為である「食事」。
食事は、人生の多くの時間を費やして行う行為です。しかし、食事の幸福度と人生の幸福度が密接な関係にあることを自覚している人は、そう多くないのではないでしょうか。
今回は、人生の質をも左右する「食事の質の大切さ」についてご提案します。

料理とQOLの関係


良質な食事を摂る習慣がある人は、人生の幸福度が高い傾向があるようです。
株式会社Hakuhodo DY Matrixのシンクタンク「100年生活者研究所」が2023年に行った調査では、食事で幸福を感じる人は人生の幸福度が高いだけでなく、人間関係や仕事、健康においても高い満足感を得ていることがわかりました。
筆者自身もこの20年ほど、幸福な食事を意識しながら暮らしています。結果として、食事の幸福度が人生の幸福度をダイレクトに左右する実感があります。
食事の質が人生の幸福度に影響する大きな理由には、食事の「身体的影響」「精神的影響」「習慣的影響」の3つがあげられると筆者は考えています。

食事の身体的影響

人間の体は、摂取した食物により形成されます。当然、質の悪い食事を摂り続ければ体は不調を起こします。これが「身体的影響」です。
単に糖質や脂質の多い高カロリーな食事ばかり摂っていると生活習慣病を患いやすい──というだけの話ではありません。
過剰な塩分は消化器官や心血管といった内臓を、長期に渡りじわじわと蝕みます。糖質や脂質の過度な摂取も同様です。問題なのは、これらを摂取しても即座に健康への悪影響があるわけではないので健康リスクを自覚しにくく、そのリスクを可視化するのも難しいことです。
参考資料:厚生労働省「生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連」

食事の精神的影響

食事による充足感には、過食を予防したり食物の摂取量を適切にコントロールしたりする働きがあります。
皆さんはどんなときに食事に満足するでしょうか?つまり、どんなときに「これ以上は食べる必要がない」と思うでしょう?
おそらく大半の方が「お腹がいっぱいになったとき」と答えるのではないでしょうか。
「お腹がいっぱい」という状態は「胃袋が満たされた状態」だと思いがちですが、実際には「満腹中枢が刺激された状態(正確には「食欲を抑制するホルモンが分泌された状態)」なのです。
つまり、胃袋が物質的に満たされていなくても、満腹中枢が刺激されれば人は満腹感を得て食べるのをやめる──というわけです。
そしてこの満腹中枢の刺激には食事の質のほか、食事を摂る際の状況や環境などによる心理作用も大きく影響するのがポイントです。
たとえば回転寿司店へ食事に出掛けると10皿20皿を平気でたいらげられるのに、たまに奮発して回らない寿司屋へ出掛けると、せいぜい10~15巻でお腹がいっぱいになってしまう──という経験をしたことはないでしょうか。
食事そのものの質も影響していますが、後者には大将との会話やお店の雰囲気などによる心理的充足感が大きく影響しています。
つまり、食事の満足感は「摂取した量」などの物理的要因だけでなく、むしろ精神的要因に左右される側面が大きいのです。
キャンプで食べる食事をおいしく感じたり、家族や友人たちと一緒に楽しむ食事がおいしく感じられたりするのが典型的な例です。
参考資料:日本内科学会雑誌「食欲制御物質と肥満症」

食事の習慣的影響

習慣的影響とは「食習慣による心身への影響」のことです。
不摂生をしつつ「今日一日だけは体に良い食事を摂ろう!」と思っても、健康はすぐには取り戻せません。健康的な体作りには健全な食習慣が欠かせませんし、健全な食習慣を維持するには「健全な食事をおいしいと感じられる感性」を養う必要があります。
あるいは調理に関するある程度の知識や技術も必要でしょう。
また、満腹感などにおける「人間の脳メカニズムの妙」を知っていればこそ、食事での充足感を高めるために(過食を防ぐために)食事を摂る環境や状況をセッティングするという知恵も生まれます。
こうした習慣が、やがて身体的・精神的に大きく影響するのです。
食事の身体的影響と精神的影響を良い方向に働かせるためには、食事に関する健全な習慣の会得が欠かせません。

良い食事と悪い食事の違い

「良い食事」と「悪い食事」を明確に定義するのは困難ですが、筆者は以下のように考えています。
・良い食事=将来の健康の下地となる食事
・悪い食事=将来の健康を冒す可能性がある食事
悪い食事の具体例をあげると、塩分や脂質が過剰な食事。あるいは糖分やうま味が過剰な食事などです。ただし、そうした料理が必ずしも悪いわけではありません。
たまには自分へのご褒美にスイーツを食べたり、ラーメンを食べて満足したりするのもいいのです。本当に問題なのは「それを継続的に摂取する習慣」の方なのです。
ですから、食事を摂る際には「これは健康の下地のための食事か?それとも嗜好品としての食事か?」と、一瞬でも考える習慣をまずは身につけるといいでしょう。
そうすると、やがては意識的にも無意識的にも「健康の下地のための食事」を多く選択するようになり、嗜好品の摂取を控えるようになるはずです。相対的に、嗜好品的な食事の摂取に伴う満足感や幸福感を高めることにもなります。

食事がQOLを左右する理由


歳をとればとるほど「健康が何よりもの財産」と感じる機会が増えるものです。
健康はまさにかけがえのない人生の財産です。
そしてその健康を司るのが「習慣」であり、さらにその習慣のうち健康に占める割合が多いのが「食事」です。
ストイックに食事制限を行ってもそれはそれでストレスですから、ストレスが溜まらない程度に嗜好品的な食事を楽しむことも大切です。それでいて健康リスクを高めないレベルに食習慣をコントロールすることも大切です。

QOLを高めるためにまずやるべきこと

今回は、食事がQOLを左右する理由を、人間の脳のメカニズムと併せて簡単に解説しました。
本シリーズ「QOLを高める大人の料理の嗜み方」では今後、QOLを高める調理法やレシピ、大人向けの食育など、QOLを高める食事の具体的なテクニックやハウツー、チップスをご紹介します。
ストレスが溜まらない程度に嗜好品を楽しみ、健康リスクを高めないレベルに食習慣をコントロールすることを目標に、QOLに貢献するライフスキルをご一緒に磨いていきましょう。

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。