“大人(として)の学び”という休み方改革

働き方改革が少しづつ浸透してきた昨今、多くの会社が「長時間労働改善のための残業時間の削減」「在宅勤務制度の推進」「年次有給休暇の取得促進」「仕事と育児の両立支援」など多種多様な目標を掲げていますね。でも、なぜかその取組みが楽しくない。そんな声もよく耳にします。それはなぜか? それはきっと働き方の対となる「休み方」に工夫がないからなのかもしれません。「働き方改革」には取組むけど「休み方改革」は個々の裁量。そこまで会社が関わることもない。おそらくそんな理由が大半なのと、もう一つ。「休み方改革」ってフワッとしていてよく分からない。そんな理由が多いからなのではないでしょうか。

そもそも何だか分かりにくい「休み方改革」なので『自分自身の「休み」との付き合い方はどうなのか?』『”しっかり休んだ実感”がちゃんと仕事に転嫁されているのか?』と聞かれると実はそれが結構、微妙だったりします。日常の休みの中で『”しっかり休んだ実感”』を意識し実践している人がどれだけいるのか?そして、休んだ実感を得るためプロセスとして「インプットの受入れ方」と「付き合い方としてのアウトプット」はどれだけできているのか…?

休日に経験したことへの自分なりの気づき、興味の持ち方、好奇心、に対する発信力=(アウトプット)を顧みて高めていくことは意外と出来ていないケースが多いものです。なぜなら、日常の中で大量の情報の取捨選択やコミュニケーションに過剰に反応しようとして疲れてしまうと、自分の時間の生み出し方も受動的な情報に偏ってしまう。ひいては一方的に流れてくる情報を眺めるだけになり「休日」が退屈に感じられてしまう「休んだ実感が得られない・満足しなかった」といった結果になったりします。

今回の休日デザインの人は、東京 浅草で「楽しく暮らす人を増やす」をミッションにされている合同会社ハハハ 代表 川口民夫さん です。新しいビジネスを始めるために仕事やプライベートで一貫して持っているマインド、ビジネスを通じて得る“学び”のプロセス、川口さんのビジネスと休日の過ごし方から生まれるもの、について伺いました。

瓦を叩いて見えた!楽しく暮らす人を増やす術

「浅草で瓦割りができる店がある!」という情報はテレビ番組やCMなど色々なメディアが注目していることもあって今やかなり知れ渡ってきていますよね。浅草寺からほど近い場所で瓦割りを通して楽しい体験を提供している 合同会社ハハハ / 瓦割りカワラナ の代表 川口民生さん。”楽しく暮らす人を増やす” をミッションとして平成28年の8月8日(ハハハの日)に起業し今期で4年目。瓦割りに興味を持った国内外からの挑戦者が日々、新しい体験から得られる何かを求めに楽しい時間を過ごしにきています。

ノートに綴るアウトプットとしての未来像

大学を卒業して自分のやりたいことに迷っていた時期、川口さんはやりたいと思うことを一つずつノートに書き出していました。そして、書き出したやりたいことを時間の中で実践していくこと。それは後に川口さんのアウトプットとして経験値が培われることにも繋がっていくプロセスでした。

36歳を迎えたある時、川口さんはあることに「やばい」と感じます。20代前半の頃に読んでいた志村けん 著「志村流」には、自分の人生を72年と考えた時に年齢を1日換算して捉える考え方があり、36歳がちょうどその折り返しの年齢だったと気づきました。「今の仕事は確かに順調。でも、この先この生活を続けていった時に本当に楽しい人生だったと思えるのか?」と自問自答した時に「動くなら今!」と感じ行動に出ました。敷かれたレールの上で忙しく、それなりに楽しく過ごす人生もあるけど、自分や家族、仲間、そういった人たちが楽しく暮らせるようにしていきたい。川口さんは会社員でありつつ副業として、まず起業することを決めました。

そして、川口さんが実践したアクションはポイントとして下記の3つの観点で捉えられます。

より楽しく暮らすには?を考える中で実践したことは

  1. 発信することから学ぶこと

  2. 関心のあるテーマについて話せる仲間がいること

  3. 多様な他者からのフィードバックを大切にしていること

例えば、川口さんはSNSでやりたいことを呟くグループを作って、それぞれがやりたいことを呟き、共感したり、一緒に実行しました。その中の一つとして、メディアで見かけた瓦割り体験を書き込んでみたところ、意外にも反響が高かったこともあり、関東で唯一瓦割りを体験できる戸越銀座に行きみんなで体験して楽しみました。やりたいことを複数人で徐々に実現させていくことを通じて、大学を卒業した頃「自分の店や会社を持つ」ことをやりたいことの一つにあげていたことを思い出し、起業する決意へと繋がっていきました。でも、その時は瓦割りサービスを自分で始めるとは思っていませんでした。

瓦割りサービスを始めた理由

関心のあるテーマを仲間に話し、自ら発信して巻き込んでいくことで得られるフィードバック。それは、起業後に川口さんが、高校時代の友人とお酒を飲んでいる時にも感じたことでもありました。会社設立の報告と「楽しく暮らす人を増やしたい」について話したところ友人からは「会社を作って一体何をやるの?」と思わぬ返しがありました。今の生活で十分だと感じている友人と話したことからのフィードバックにより、その時はただ漠然と「楽しく暮らす人を増やしたい」と伝えていた言葉が自分の言葉となり、現在の合同会社ハハハのミッションへとつながるきっかけになりました。

また、友人と最近の楽しかった出来事を話す中で瓦割りした体験の話でも盛り上がりました。実はその瓦割りをしている会社は高校時代の同級生がやっていると教えられたこともあり、川口さんは瓦割りに感じた縁から”瓦割り”に最適な物件も探しあて、自分が瓦割りを体験した約1年後に、「瓦割りカワラナ」をオープンしました。

“学び上手な大人”になるということ

やりたいことに対して、一つ一つアクションを取っていくことは、次の何か新しいことを始めることに繋がっていくこと。川口さんの場合、たまたまやりたいことの一つに会社をつくるということがあった。そして、アクションを起こしてみた。そして行動することが次に繋がっていった。つまり、アウトプットのサイクルが上手く回っていったと言えます。

ノートに書き出す、友達に宣言してみる、そして多様なフィードバックを大切にする。小さくても行動を起こすことで、それが経験値として積み重なり、意外と簡単に次に繋がる何かが出てくるかもしれない。それが“学び上手な大人”になるプロセスと言えます。大人だからこそ学べる、大人になってより上手く学ぶ。自然と身についたことが川口さんのビジネスが飛躍してくために必要な“大人(として)の学び”だったと言えます。

インプット思考からアウトプット思考へ

川口さんが身につけ実践されてきた“大人(として)の学び”。それは「積み重ねてきた経験値からビジネスに繋がるインプットとアウトプットが上手く循環していること」。でも、誰もがそのような“大人(として)の学び”のセンスを持っている訳ではありません。どちらかにインプット/アウトプットのバランスが偏っていても循環しにくいものですよね。

インプットだけでは何も変わらない

休日にのんびりと本を読んだり映画を見たりすることは自分の中に何かを取り込む「インプット」です。それに対して、自分の中にあるものを外に向けて発信したり、そこから何かを生み出し新たに創造することが「アウトプット」です。

例えば、今の自分に悶々としていて、本から何か得られないかとビジネス書を読んだとします。経験値がない分野について知識を増やしていくことで、読んでいるうちに気持ちが豊かになるかもしれません。しかし、読み終わった後、どのくらいの”変化”を遂げているかというと…どうでしょうか。本を読んでも(=インプット)そこから得た知識や気持ちが起こす新たな行動(=アウトプット)が無ければ、それまでとなんら変わりませんよね。読んだ後に何もしなければ、どんなに思い切って高価な本を購入し読んでも自分を変えてはくれません。
例えば、海外旅行に行っただけ(=インプット)、だけでは何も変わりません。そこから得た知識や考え方により行動を変えることで(=アウトプット)、自分を高めてより上質な“大人(として)の学び”を築くことができると言えます。

休日に新たな視点をくれるアウトプット

アウトプットは、小さな行動でも構いません。実践したことに対して、自分から外に向けるアクションがアウトプットです。川口さんのように考えを文章にするのも表現の一つ。ただし、より良いアウトプットするためには、小さな行動でも自分の中で達成すべき目的を明確にして、そにれ向けて実践することが重要です。知識や経験の幅を広げ(=インプット)、そこから行動を起こすこと、新しく何かを作り出すこと(=アウトプット)には、終わりはありません。アウトプットを意識してみると、退屈な休日が少し違って見えてくるはずです。

更に踏み込むならば、大切なことは「自分に新たな視点が得られるためのインプット」です。正しいこと、正解のインプットなんてありません。なぜなら「正解」と思っていたことは急に変わるし、人により違うのが普通なことだからです。自分の疑問や気づき、考えを発信しながら他者と一緒に考え、新たな考えを創造していくこと。つまり、どんなアウトプットをするかを考えながら自分の考えを他人に伝えることで、さらにより良いアイデアを得ることもこれからの“大人(として)の学び”だと言えます。

大人のアウトプットを出す方法

でも、アウトプットなんて何をしたらいいか分からない…。例えば、SNSで自分の思うことを投稿したりするのもアウトプットです。他人のコメントや評価を気にせず「人生の楽しみを増やす」ためには?を考えてみる。そのためには、知識を増やしたり教えを請うなどのインプットをしていきます。そしてまたアウトプットをする。アウトプットのサイクルを高めることが“大人(として)の学び”へと繋がっていきます。

休日の中にある”大人の学び”

学び上手な大人の休日

“大人の学び”の観点でみると、瓦割りから「楽しく暮らす人を増やす」を軸として自社サービスを拡大していった川口さんにとっての「休み方」も変わっていきました。

起業する前後でご自身の休日に対する意識は変わりましたか?
  • 副業を始める前までは「ON(仕事)」と「OFF(休日)」と分けて暮らしていて平日は仕事する(お金を稼ぐ)、休日は遊ぶ(お金を使う)というようにぱっくり分けて考えていました。「ON:平日:仕事する=お金を稼ぐ、OFF:休日:遊ぶ=お金を使う」つまり、会社員の頃は「平日はストレスを溜めてお金を稼ぎ、休日はそのストレスを発散するためにお金を使う」とこれまで刷り込まれて過ごしてしまったのではないかと感じてました。長期連休になったらどこかに出掛けなければいけないという強迫観念みたいな。それが、土日は自分の会社の仕事をするようになって、休日は学びながら仕事する(お金を稼ぐ)という方向にシフトしていきました。「ON:平日:仕事する=お金を稼ぐ、OFF:休日:学ぶ・仕事する=お金を稼ぐ」
    と、いうようなものへ変わっていきました。
休日はどのように過ごしていますか?
  • 会社を辞めてから、あまり「休日」という概念を持たずに過ごしています。そんな感覚なのですが、週に最低1日は家の日と決めて家族と一緒にいます。まだ子供が小さいのであまり遠出することはないですが、大きくなったら色々な場所に出掛けることを楽しみにしています。つまり、休日においては、仕事も家のことも並列に考えている感じです。
休日から仕事のアイデアに繋がることはありますか?
  • 友人と飲んだり、どこかに出掛けたりするときには提供されるサービスの仕方やイベントごとの仕切り方など色々と注目してしまいます。合同会社ハハハは「楽しく暮らす人を増やす」をミッションに掲げていますので、どうすれば、自分は「楽しい」と感じるのかをまず考えてしまいます。
ON とOFF が同列に管理されると言うこと
日常の休日と自分の仕事の関係性について教えてください
  • 仕事の予定も、家の予定も、趣味の活動も、仲間との約束も、同列にスケジュール管理されていて多面的に動けるようになったなぁと感じてます。ONとOFFが同列に管理されることで、それまで持っていた自分のなかでの呪縛みたいなものがなくなっていき、「働く」と「学ぶ」と「遊ぶ」の垣根があやふやになっていたりもします。自分で仕事を作ることこそが「学び」であったり「遊び」であったりもするし、お客様商売ではあるものの、店⇔お客様との関係性よりはぐっと近付いて、会話していたりすると「働いて」いるのか「遊んで」いるのか分からなくなったりもしますね。

川口さんの休日についての質問で大切なのは、情報の取入れ方(インプット)を知り、発信するための上手い付き合い方を知り(アウトプット)、それらを同時にバランスよく行なっていくことですね。“大人(として)の学び”こそが仕事を作ることでもある、ということ。

もし、あなたの会社の働き方が変わったのなら、自分自身の「休み方」を見直してみてはいかがでしょうか。「長期休暇=国内外旅行など、どこかに出かけなければいけない」というような旅行することが目的になってしまっては「休日」すら仕事の延長線状になってしまいかねません。「楽しまねばならない休日」にやや強迫観念すら感じられる日常の「休み方」に陥ってしまう可能性もあります。

rawpixel / Pixabay

“楽しく暮らす人を増やす”とは?

川口さんが実践されていることは極めてシンプルです。友人との会話やSNSでのアクション。そしてノートに綴ってきた想い。つまり「自分は何をどのように捉え、どう考えているのか、今どんなことに興味があるのか?」に繋がる1%のアウトプットを始まりとして「自分の考えを他の人に伝えることで、さらにより良いアイデアを得られること」を経験を通じて実践し“大人(として)の学び”を得ています。アウトプットさえすればフィードバックをきっかけにアウトプットのサイクルを回すことができると言う「発信することから学ぶ」ことの大切さを感じられます。ONとOFFが同列に管理されることで、「働いているのか」「遊んでいるのか」が分からなくなることも、”楽しく暮らす人を増やす”というミッションに向き合っているからこそなのかもしれません。

また、アウトプットを大切にすることは「異なる人と共にやる」ことで「正解を持った誰かから学ばない」ということでもあります。既にたくさんの経験がある“大人(として)の学び”は、人や社会に発信して反応してもらうことで、新たな学びを得ることができます。性別、年齢、職場、国籍、考え方の違う人 と五感を使って一緒に考えることを楽しむことが大切です。

あなたの「休日」をいつもと違うデザインしてみる際に、川口さんのアクションを真似してみることで休日の多様性を感じて、より良い休日に繋がるかもしれません。“楽しく暮らす人を増やす”、それはアウトプットのサイクルを学びの起点として、一人でなく、他人と行動することで拓かれていく多様な選択肢を“大人(として)の学び”として自分自身に繋げていくこと。川口さんにとっての「休み方改革」はこういったプロセスで作られてきたのかもしれません。

瓦割り カワラナ
〒110-0032 東京都 台東区 浅草2丁目27-17
http://kawarana.jp/

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