QOLを高める大人の料理の嗜み方~おいしい料理の条件とは~
QOLを高める大人の料理の嗜み方~おいしい料理の条件とは~
QOLを高める食事の実践法を具体的にご提案する本シリーズ「QOLを高める大人の料理の嗜み方」。
前回の「食事の質と人生の質」編では、QOLと食事の関係について解説しました。
今回はおいしい料理を作るために、まずは「おいしい料理の基本的な仕組み」について説明します。
おいしい料理を作るのに欠かせない重要なポイントについて解説するので、おいしい料理作りに挑戦するための予備知識と思ってぜひ最後までご覧ください。
おいしい料理の条件
おいしい料理にはいくつかの条件があります。
それぞれの特徴について説明します。
うま味
うま味がどういう味かを知るには、うま味調味料をほんの少しだけ舐めてみるのが手っ取り早いかもしれません。人間が「おいしい!」と感じる基本味の一つで、ほとんどの食物に多様な形で含まれている各種アミノ酸が正体です。
昆布に豊富に含まれているグルタミン酸や、煮干しや鰹節に代表されるイノシン酸、椎茸などに含まれるグアニル酸の3つが、うま味を代表する三大うま味成分といわれています。このほか、貝などに豊富に含まれるコハク酸や、桜えびなどに豊富なアスパラギン酸など、さまざまな種類のうま味成分があります。
さて、うま味調味料を添加せずにおいしい料理を作るためには、食材が持っているうま味を引き出す必要があります。
食材のうま味を引き出すのに有効な方法が「加熱」です。
うま味成分のもとであるアミノ酸は、通常は食材の細胞の中に閉じ込められた状態です。加熱により細胞を壊すことで、うま味成分を引き出すことができます。
焼き物や蒸し物など、加熱することで食材のうま味を引き出すことができますが、うま味をもっとも効果的に引き出し、かつムダなく味わえる調理法が「煮込み」です。
ただし、煮込み料理には「調理に時間がかかる」というネックがあります。
塩味
料理には塩が欠かせませんが、塩の役割は「うま味を引き立てる」ことであり、塩をかけただけで料理がおいしくなるわけではありません。
たとえばその辺の雑草をむしって塩をかけて食べても、さほどおいしくは感じられないはずです。しかし、その雑草を蒸してから塩をかけて食べると、「おや?」と思うくらいにはおいしく感じられるから不思議です。
理由は、蒸すことにより雑草の細胞が破壊されてうま味成分が引き出されたから──です。
そこにうま味を引き立たせる塩をかけることで、ただの雑草が料理へと昇華するわけです。
このように、うま味と塩味には不思議な相関性があります。
なお、良質な塩にはミネラル類がたっぷりと含まれています。ミネラルの雑味や、海由来の香りなどが料理に複雑さを与えるため、良質な塩を使うと料理がいっそう香り豊かでおいしく感じられます。
香り
おいしい料理には香りも欠かせません。
香りを最大限に楽しむには、新鮮な食材を使うのが原則です。あるいは、調理の過程で必要以上に加熱し過ぎないのも、香りを飛ばさないためのテクニックです。
ただし、肉や魚、発酵食品などのように、熟成させたり発酵させたりすることで特有の香りが生まれ、いっそう魅力的な食材へと変化するケースもあります。
相性とバランス
人間が感じる味覚には、うま味や塩味のほか甘味、酸味、苦味などがあります。
最近の研究では、上記のほかに脂肪味やでんぷん味などもあることがわかってきました。我々が「コク」と表現してきたものが、科学的に定義されてきた形です。
さて、これら一つひとつの味覚は、それ単体でおいしさを形成することができません(唯一例外的に「甘味」だけは単体でおいしさを形成できます)。それぞれの味覚は相互に影響し合い、バランスを取り合ってようやく「おいしい料理」になります。ここにはもちろん「香り」も含まれます。
つまり組み合わせとバランスが重要なのです。
覚えておいてもらいたいのが、「おいしい料理=味が濃い料理」ではないということ。
組み合わせとバランスが「おいしい料理」の基本です。
おいしい料理の作り方
おいしい料理に必要なそれぞれの味覚の中でも、とりわけ基本的かつ重要な位置を占める「うま味」と「塩味」の調整をはじめ、香りを演出したりそれぞれのバランスをコントロールしたりするために必要なテクニックをご紹介します。
うま味を出すには
先述したように、食材のうま味を引き出すには「加熱」するのが効果的です。中でも煮込み料理は、食材のうま味を存分に堪能できる調理法です。
塩を加減するには
食材のうま味が十分に引き出されていれば、塩はほんの少しで十分です。料理中に「なんか物足りないな?塩を加えてみよう」と加塩した結果、塩辛いだけの残念な結果になってしまった──という経験がある方は多いのではないでしょうか。これは、食材のうま味が十分に引き出されていなかった典型的な失敗例です。
香りを演出するには
新鮮な食材を使うのが理想ですが、スパイスやハーブなどで香りを添加する方法もあります。また、食材の生臭さや青臭さなどを他の食材や調味料の香りで隠す「マスキング」のテクニックも有効です。
その他のテクニック
前回の「食事の質と人生の質」編で解説したように、人間の味覚は食事の味や香りだけでなく、状況や環境、ひいては食事の見た目にも左右されます。
料理に合う食器を厳選して美しく盛り付ければ、料理はいっそうおいしくなるのです。こうして人間の心理的作用や脳の錯覚などを利用するのも、おいしい料理を作るテクニックの一つです。
おいしい料理で休日を満喫しよう
今回は「おいしい料理の条件」について簡単に解説しました。それぞれのセクションにおける具体的なテクニックや詳細については、今後さまざまなレシピなどを通して詳しくお伝えします。
おいしい料理を作れるようになると食事が楽しくなりますし、心身のコンディションも整いやすくなります。健康に配慮しつつ、食卓のQOLにもコミットできる「料理」。
休日を楽しみながら幸福度を高めるのに、料理は最適なツールであり最高のコンテンツです。
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