休日をデザインするには 人間心理から考える休息と労働の相関性

休日をデザインするには 人間心理から考える休息と労働の相関性

「休日をデザインする」と聞いて、皆さんはどんなことをイメージされるでしょうか?
おそらく「休日の過ごし方を計画する」という方が大半ではないでしょうか。
もちろん計画性をもって休日を過ごすのは素敵なことですが、実は「十分に休息するには、そもそも労働を自分に適した形にデザインする必要がある」ということが、近年の行動医学研究によって明らかになってきています。
今回は、有意義な休日をデザインするために欠かせない「働き方のデザイン」についてお話しします。

休日と労働の相関性を理解する


自分を酷使して精一杯働いた翌日は、ゆっくり休んで心身のリフレッシュを試みたいものです。
しかし、実はこの「自分を酷使して働く代わりに休日はゆっくり休む」というサイクルは、QOLを著しく低下させる可能性があります。
休日の過ごし方や働き方を適切にデザインするために、まずは休日と労働それぞれの理想的な役割を理解しましょう。

休日の役割

休日には、仕事によるストレスをリカバリーする役割と、仕事への活力(ワーク・エンゲイジメント)を高める役割があります。
もう少し深堀りすると、休日のリカバリーは、以下4つの要素で構成されているといわれています。
1. 心理的距離
2. リラックス
3. 熟達
4. コントロール

1の心理的距離とは、仕事のことを考えないくらいに仕事と距離を置いている状態を指します。2のリラックスのために必要な条件でもあります。
3の熟達は、わかりやすくいうと余暇時間での自己啓発であり、前向きな気持ちで仕事に打ち込み研鑽するために必要な意欲のことです。
4のコントロールは、余暇をどのように過ごすかを自分で決められる精神的・物理的な状態にあることを指します。
消耗した心身をリカバリーするには1と2が必要ですが、ワーク・エンゲイジメントの向上には、2のほか特に3と4が必要だと考えられています。

労働の役割

一般的に多くの方は、生活(収入)のために働いているかと思います。一生食いっぱぐれないくらいの資産があれば、働かない生き方を選択する人も多いのではないでしょうか。
しかし、実は労働には収入以外の役割があります。収入以外の労働の役割は、大きく「ワーカホリズム」と「ワーク・エンゲイジメント」に分けられます。
ワーカホリズムは、わかりやすく言うと「働いていないと気持ちが落ち着かない状態」です。強迫的な労働がこれにあたります。
ワーク・エンゲイジメントは「働くことで活力を得ている状態」です。仕事が楽しすぎて、休日も仕事のことばかり考えているような状態です。
いずれもオーバーワークの危険性をはらんでいますが、機序がまったく異なることがわかると思います。

休日と労働の相関性

行動医学研究分野における研究論文「日本人労働者におけるワーカホリズムおよびワーク・エンゲイジメントとリカバリー経験との関連」によると、ワーカホリズムはリカバリーの4要素のうち、3の熟達以外すべての要素と正の関係が認められました。
一方、ワーク・エンゲイジメントは、リカバリーの関係において1の「心理的距離」以外の大半に相関性が認められました。
こちらの論文でもっとも注目したいのが、「ワーク・エンゲイジメントは休日のリカバリーを促進するが、ワーカホリズムはむしろ障害となる」という点です。
簡単にまとめると、「意欲的に働くには、仕事を仕事と思わずに休日を使ってまで楽しめるような環境が最適」ということになります。
つまり休日を適切にデザインするためには、まず労働を適切にデザインする必要がある──ということです。

休日を適切にデザインするために


それでは、休日を適切にデザインするための手順を具体的に考えてみましょう。

1. 労働を最適化する(ワーカホリズムの克服)

近年はダイバーシティに象徴される働き方改革により、被雇用者の労働条件や労働環境が十分に配慮されるようになり、時間外労働なども厳しく規制されるようになりました。
従業員の働きやすさに配慮する企業は増加傾向ですが、一方で「働きがい」の重要性について議論される場はまだまだ多くない印象です。
労働を最適化するには「働きやすい環境であること」が前提となりますが、もう一つステップアップして「働きがい」に注目してみましょう。
ワーカホリズムを克服してワーク・エンゲイジメントを高めるには、働きがいをもって仕事への熱意や活力を養うのが鍵です。

2.休日を最適化する(ワーク・エンゲイジメントの向上)

労働を最適化できたら、休日もより意義のある形にデザインすることができます。仕事に還元できるような学習や体験を得たり、あるいは仕事のことをすっかり忘れて趣味や家族、友人との時間に没頭したりするのもいいでしょう。
少なくとも消耗した心身のリカバリーに休日のすべての時間を投じることはなくなるはずです。

3.ワークライフバランスを最適化する

休日と労働の相関関係を理解し、両者を適切にデザインできたなら、ワークライフバランスを最適化して人生そのものを自分に合う形にデザインしましょう。仕事で消耗して休日にリカバリーするのではなく、休日で養ったワーク・エンゲイジメントを仕事に還元し、仕事で得た活力を休日に還元する──という理想的なサイクルを作るのが目標です。

ラーケーションやワーケーションを上手に取り入れて、各々のワークライフバランスを試行錯誤してみましょう。

休日をデザインするということは、人生をデザインするということ

休日のデザインと働き方のデザインは、密接につながっていることがおわかりいただけたでしょうか。

休日の過ごし方や働き方について考える作業は、人生そのものをデザインすることにもつながります。
そして何より、これらのプロセスは個々のパフォーマンスとQOLを最大化するために必要なロードマップでもあります。
労働者、ビジネスマン、社会に生きるあらゆる現代人にこそ必要な指標といえるかもしれません。

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