知っていますか? “10連休を構成する「A + B = 休日」の法則”

10連休が終わってから少し経ちました。もうすっかり日常生活に戻ってしまい、連休中に何をしたかも覚えてない…なんて人も多いんじゃないでしょうか。今年のGWは5月1日が新天皇の即位の日となったため、祝日法に基づいてお休みでしたね。テレビをつけても、運転中にラジオを聴いても4月30日(火)〜5月2日(水)の連休の折り返し前の時点は特に、まるで「春先のお正月」のようなムード/空気感を感じた方も多かったのでは?と思います。言い換えれば「春の暖い時期にお正月気分になれた大型連休」でもあったので、いつものGWなのか、お正月モードになった方がいいのか?『流れる休日の空気感に何となく戸惑いすら感じた』という方の声も周りから聞こえてきました。

今年のGWは例年と何が違って、それが外部要因として何があり、いかに影響したのでしょうか? そこで今回は2019年の10連休の構成要素(外部要因となる要素)をシンプルに俯瞰した調査結果をご報告します。マクロ視点で構成要素を4つに分解しました。また、今回の特殊な空気感を醸成していったマスメディアは、それぞれの媒体の特性をいかに活かしていたのか? マスメディアはどんな伝え方をしていたことで、受け手は「何気なく」且つ「心が満たされた大型連休」になったのか?を紐解いてみたいと思います。

2019年の10連休はどんな要素で構成されていたの?

  • 10連休を構成する休日マインドのベースとなる4要素

  1. いつものGWを楽しむモチベーション(例年通りの連休への期待感)

  2. GWとしては異例の連休期間の長さ

  3. 即位を通じた日本文化・歴史の再認識、祝賀ムードの体感

  4. 未体験のオフィシャルな10連休の空気感

それでは、10連休のベースとなった構成要素の内訳を解説してみたいと思います。この構成要素をベースにして、個々人の10連休の活動が行われていたものと考えます。

1. いつものGWを楽しむモチベーション(例年通りの連休への期待感)

GWは年に一度の大型連休なので、この期間に備えて誰もが期待値が高まるのは当たり前のこと。自分だけじゃなく友達・家族も一斉に休みになり時間を一緒に過ごせるので『今年は何をしようかなぁ?と仕事を忘れて束の間の貴重な休日を楽しむ』という毎年の大型連休に対するワクワク感(期待感)がこれにあたりますね。GWは暖かい日が続く傾向があるので気持ちが高まるのも当然のこと(今年は少し寒かった日もありました…)

2. GWとしては異例の連休期間の長さ

今回のGWは「10連休のため色々なことが出来そうな時間的余裕が心に生まれやすかった」ことが大きな特徴でした。つまり「せっかくの春先の10連休だから、いつもとは違うことをしてみようかな(部屋の片付け、手をつけられなかった趣味、旅行や実家への帰省など)」と思ったり、逆に「GWにどこに行っても混雑していて料金が高いので、そんなに長くてもちょっと嫌だなと感じる」ことも連休期間に起因することと言えるのかもしれません。連休中、ラジオから聞こえてきた「高速道路の渋滞が続いています。東北道の上りは埼玉県の羽生インターを先頭に42km、常磐道の上りは柏インターを中心に断続的に16km、中央道の上りは小仏トンネルを中心に26km…」という交通渋滞情報は、連休期間と人の行動意識の同質化が招くものでもありましたね。やっぱり混雑するタイミングは連休期間に依らず重なってしまう。

3. 即位を通じた日本文化・歴史の再認識、祝賀ムードの体感

このタイミングは極めて稀なものだったのではないでしょうか?恐らく一生のうち何度も見られることじゃない「即位」という伝統的な日本の文化・歴史の目撃者になれたことは、貴重な休日を過ごしているという一体感が生まれたことでもあったと思います。テレビを見れば「これはお正月なのか?」と思わせるような「平成の終わり/令和の始まり」を祝賀ムード一杯で伝える番組も多くありました。これについては後ほど詳しく見てみたいと思います。

4. 未体験のオフィシャルな10連休の空気感

社会全体に10連休の空気感が漂うことは未だかつてほとんどないはず。しかも春先に経験する機会はこれまでもこれからも稀なことです。もちろん、連休期間は仕事が全て休みだった人もいれば、半分(または2/3)は仕事だった人、全て仕事だった人などそれぞれ違いますが、今回は社会全体がオフィシャルに10連休の空気感が漂っていました。だから逆に「休んでいいと言われても、長すぎてどう過ごしていいのか分からない」「計画の立て方が分からない」など10連休の時間の過ごし方で心と体が上手く馴染めず、結局いつもの土日と同じ休日時間を過ごすことで心を満たそうとした方も多かったのではないでしょうか。

『未体験のオフィシャルな10連休の空気感』が醸成された要因の一つはマスメディアによる情報の伝え方が影響していました。では、「マスメディアは実際にどのように10連休する国民に対して情報を伝えていったのでしょうか?

テレビ、ラジオ、新聞について見てみましょう。

テレビ:平成の終わりと令和の幕開けフィーバーによる番組構成

テレビはこの10連休をどのように映していたのか?を振り返ってみたいと思います。

4月30日(火)夜7時から『生放送!平成最後の日』と題した中継企画や「視聴者にとって平成はどんな時代だったのか?- 自然災害、バブル崩壊、ネットビジネスの台頭vs衰退したビジネス、平成に流行った歌」「平成最後の日に最もホットな場所のリポート」といった視覚に訴える印象の強いコンテンツを軸にしたものが多くありました。5月1日(水)は午前中から「令和フィーバー密着!街が百貨店が区役所が大盛況!令和に懸ける歌手&芸人&商品も!」や「新皇后雅子さま初日のドレスと受け継いだ美智子さまのティアラ」「御朱印10時間待ち記念セール・令和初日の行列を追跡」「令和 幕開け・経済効果は!?」と続いて「即位礼正殿の儀」が放送されました。その後はいつもの番組に「令和初」を付けてお祝いムードを醸し出すようなものばかりでしたね。例えば、プロ野球ニュースでも「令和最初のプロ野球」ということで「令和 初ヒット」「令和 初ホームラン」「令和 初危険球退場」…。でも、それも夕方になると普段の平日と特に変わらない番組構成で、夜になっていくほど日常化していくものばかりでした。

全体的に平成から令和に向けて厳か(おごそか)な感じを伝えるのかな?と思いきやお正月のGW版のように祝賀モードを全面的に伝えようとする番組が多かった印象でした。皆さんもそう感じませんでしたか?そして、平成最後に婚姻届を提出するカップルと慌ただしい役所の様子など、テレビはタイムリーに視覚に訴えるGWの楽しい様子を映しているような番組が多いものでした。日本国内が休日モードの中でどんな番組が適しているのか?を制作側が想像することで『趣向を凝らした番組構成により視聴者は受け身の形でテレビを見ることが出来て、見て理解を深める』ことが出来ていたからこそ、テレビによる10連休の空気感が醸成されていたと言えます。

ラジオ:リスナーの生の声を中心にした番組構成

一方で、ラジオはどうだったか?

「平成にやってしまった私の懺悔」「平成にやり残したこと」「GW中間報告」などをテーマに主にリスナーからのリアルな声を取り上げて「実は普段とあまり変わりばえのない休日」だったり「どこに行っても混んでいるので近くのショッピングモールに行ってGW気分を味わってます」「世間は10連休でも仕事してま〜す」「旦那が平成最後の日にぎっくり腰・私は令和初日に風邪をひいた」「日中行ける銭湯に行ってのんびりした」というような『特別感よりも日常の休日の過ごし方にフォーカスした番組』が多くありました。ラジオ番組は日常的にリスナーと近い距離感でリスナーからの声を集めて発信しています。「リスナーと交流」する意味で、特に10連休に特別感を持たずに日常の休日の延長線上で過ごしていた人にとっては、リスナーのリアルな声を通じて番組への親近感がいつも以上に高まったんじゃないかと推測されます。

ラジオはリスナーに想像してもらう媒体でもあるので視覚に訴えない分「うんうん、そうそう!」「えっ?そうなの?」というように日本全国休みモードの中ではリスナーの日常に寄り添った内容にしていったのかもしれません。その背景にはGWということもあっていわゆる休日感覚での番組聴取というよりも、平日が休日になったことで聴く「ながら」聴取が多かったという考えもあるのかもしれませんね。

リスナーからの声で一番面白かったのは「GWが始まる1週間前にお見合い相手に『GW中に会いませんか?』と送って返信がないので『令和になったので会いませんか?』とメールしたけど返信がない…。これってダメなんでしょうか?」というリアルな日常の様子の投稿でした。

新聞:事実を文字として比較的冷静に伝達

新聞は「テレビでは伝えられないような細かい解説がされる」「文字として情報が残りやすいため、何度も読み直せて確認ができる」「媒体としての信頼度が高い」という特徴から、掲載された内容はテレビで映らないような表情豊かな皇室のお顔や祝賀ムードを楽しむ人の様子が伝わってくるものでした。

スポーツ新聞では「雅子さま、笑顔で令和の幕開け」「令和の女性たちへ(瀬戸内寂聴)」「象徴としての責務果たす」という大衆が知りたいと思う祝賀ムードの記事を通常のスポーツ記事と併せて掲載。読売新聞では「令和吉日 北から南から」「5・1 ドキュメント」「ゆかりの地 市民が祝福」や「即位 海外でも注目」という様々な観点で日本全国の4月30日・5月1日及び即位にまつわる記事を社会面などで掲載していました。勿論、一面の見出しは「平成終幕へ 陛下、きょう退位」「天皇陛下、即位の儀式」、特別夕刊として「平成に幕 令和へ」と題した記事も当然ながら焦点を当てていました。

新聞は「比較的冷静」に文字だけでなくイラストや写真を交えながら、説得力のある大型連休における令和の立ち位置について、伝えているようでしたね。

2019年の10連休の構成要素の分解で分かること

以上より、2019年の大型連休を構成する要素とマスメディアによる空気感の醸成の仕方についてみてきました。10連休の経済効果は2兆1.395円と試算されていましたが、消費者自身の休み方を紐解くと分解したベースの4要素により休日マインドが出来上がっていたことが分かります。マーケティングで言ういわゆるカスタマージャーニーマップの観点でいうと、これら4要素が更にブレイクダウンされることで消費者の休日行動が見えてきます(例:休日に映画を見る=観たい映画を撰び、時間をかけて映画館まで足を運び(車/電車)、お金を支払って、他人と一緒の空間で上映時間を楽しむ)。

  • 10連休を構成する休日マインドのベースとなる4要素

  1. いつものGWを楽しむモチベーション(例年通りの連休への期待感)

  2. GWとしては異例の連休期間の長さ

  3. 即位を通じた日本文化・歴史の再認識、祝賀ムードの体感

  4. 未体験のオフィシャルな10連休の空気感

例年のGWが上記1のみで構成されていることを考えると、今回の10連休は休日マインドがいかに複雑で且つマスメディアを通じた情報の伝え方も色々な観点が休日における伏線のように走っていたように感じますね。つまり「A(休日マインドのベース4要素)+B(マスメディアの伝え方)=休日」というような法則が言えます。

本来、「お正月はお正月の休み方(文化・伝統・歴史を体感する空気感)」「夏休みは夏休みの休み方(活動的な夏を楽しむ空気感)」「GWはGWとしての休み方(春先の暖かくフワフワした高揚感がある空気感」がある中で、こうした構成要素を知って過ごすと違う時間の過ごし方ができるものです。でも、何も知らずに受け身で刹那的に過ごすこともまた楽しいですよね。何れにしても自分にマッチした休み方を作っていくことが大切なのかもしれません。

最後に。この連休は行く先々でお祝いムードでした。この空気感にあやかってセールが行われていたりするのも、日本人の国民性なのかもしれませんね。

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