地球の裏側から ~ブラジル在住アラサー女子からみた日本 Part 6~

休日の多様性

第5回:高齢者に優しい街

日本でも近年大きな問題となっている高齢化。新興国のイメージが強いブラジルですが、実はブラジルでも年々高齢化が進んでいます。2022年時点の総人口に対するブラジルの高齢者人口の割合は約10%と日本の3分の1ですが、1990年代後半から急激に高齢化が進んでいます。今回はブラジルの高齢者に対する施策について紹介していきたいと思います。

どこでも「優先列」があるブラジル

第4回のペットフレンドリーの回の内容にも繋がるのですが、ブラジル人は高齢者や子供、外国人やペットにとても優しくしてくれます。中でも、高齢者に対しては町の様々な場所で優しい施策が見受けられます。
私がブラジルに来て一番初めに驚いたのは、スーパーや薬局に高齢者や障害者優先のレジがあること。ブラジル人は家族も多いですし大量買いをする人が多いのですが、どれだけ他の列が混んでいてもその列は高齢者が優先です。若者が高いところにある商品を高齢者に取ってあげている姿もよく見かけます。市役所等の公的機関や銀行にも優先列があるそうで、この制度は2000年に当時のフェルナンド大統領によって制定され、ブラジルの各州で施行されています。

たとえ「優先席」が無くたって…

もちろん、ブラジルでも電車やバス等には日本と同じように優先席があります。公共交通機関の優先席の設置についても法律で定められており、公益企業の場合にはこれを遵守しない車両に対しては罰金が科せられることがあるそうです。しかし、優先席はあるものの、ブラジル人にとっては優先席でなくても高齢者はじめ、障害者や妊婦に席を譲るのは至って当たり前のこと。ブラジル人の知人が、日本の電車に乗った際に大きな荷物を抱えた高齢者に誰も席を譲らないので非常に驚いたと言っていました。確かに日本では優先席で平気で寝ている若者をよく見かけますよね。ブラジル人のそのような誰にでも分け隔てなく親切に出来る姿勢は見習うべきところだと日々思います。

高齢者は公共交通機関が無料です!

そして、これらの電車やバスなどの公共交通機関に、高齢者は無料で乗車することが出来ます。これは年齢が65歳以上であれば、国籍などを問わず外国人であっても適用されるそうです。さらに、ブラジルの電車には日本とは異なり網棚がないので、たとえ知らない人であっても困っていたら重い物を持ってあげることも普通だそう。日本人はいきなり話しかけられると警戒してしまいそうですが。。。

加えて、高齢者は多くの美術館や博物館に無料で入園できますし、映画館やコンサート等も半額ということが多いそうです。日本でも高齢者料金が適用されている美術館や博物館が多くなっていると思いますが、自由な時間が増えた高齢者にとっては嬉しいシステムですよね。

介護専門のお手伝いさん、クイダドーラ

これは高齢者に限ったことではありませんが、ブラジルでは公立病院での医療費は誰でも無料です。高所得層は私立病院にかかることが多いようですが、収入がない高齢者やホームレスであっても病院に行くことができるのは安心ですね。
また、第1回のファシネイラ(お掃除を中心に行うお手伝いさん)と同様に、ブラジルにはクイダドーラと呼ばれる、主に高齢者の介護を行うお手伝いさんも存在します。介護士の資格が無くても高齢者のお世話をするためのお手伝いさんとして働くことが出来るので、高齢化が進んでいる現在、クイダドーラとして働く貧困層の人々も増えてきているようです。世界で最も高齢者が多い日本ですから、もう少しハードルを低く、他人に介護などを頼めるようになるといいなと感じています。

ブラジル人のオープンマインドは一体どこから…!?

ここまでブラジルの高齢者に対する施策やブラジルの現状を紹介してきましたが、結局のところ日本とブラジルの一番大きな違いは気持ちや習慣のような気がしています。さら何故そのようなマインドの違いが生まれているのかを考えてみると、大きく3つの要因があるように思います。
まず1つ目には、宗教的な違い。ブラジル人はカトリック教徒が多く、人を助けるということが染み付いているという点。
2つ目は、ブラジルの人種のるつぼ的な国の歴史。ブブラジルは歴史的背景からさまざまな民族、移民が生活している為、ブラジル人は異なる環境の人々と話すことに慣れているのです。
3つ目は、ブラジルの温暖な気候。日本でも温暖な気候地域の人は外交的、寒いところの人は内向的と言われるように、比較的温暖な気候の地域が多いブラジルでは外に出る機会も多いからか性格が友好的な気がします。

フレンドリーなブラジル人を見習って

日本人はおもてなしが得意な民族とされていますが、日本では古くから察することが美徳とされてきたからか、困っている人がいても知らない人に話しかけるのは少し躊躇してしまう人が多いのではないでしょうか。
私自身、おしゃべりが大好きで陽気なブラジル人にはじめは戸惑うこともあったのですが、言葉がままならない外国人としてはフレンドリーでオープンな性格の人々に救われたことも多いです。スーパーで困っている高齢者を助けたり、電車で笑顔で席を譲る若者を見ると、私自身ももっと周りを見て行動しよう、高齢者に限らず困っている人には少々疎まれても少しずつでも行動してみよう、と思う今日この頃です。私たちの日々の小さな意識から、救われる人が少しずつ増えるかもしれません。

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