
働く時間を減らさず休む時間を増やす。それがドイツ流の休み方。
「残業時間を“休暇貯金”できる国」ドイツから学ぶ、未来の休み方
残業した分をお金ではなく“休暇”で受け取れるとしたら、あなたは何日休みますか?
日本でこの質問をすると、多くの人は驚くけれど、ドイツではこれは日常です。
「労働時間口座制度(Arbeitszeitkonto)」という仕組みがあり、残業や超過勤務を“時間”として貯めて、あとでまるごと休暇に変えることができます。
私は学生時、夏にドイツを訪れたとき、この制度がもたらす文化の違いを目の当たりにしました。ベルリンの中心地でお気に入りのカフェに行くと、入り口にこう書かれていました。
「7月15日〜8月15日まで夏季休暇です。ごきげんよう!」
1ヵ月間もお店を閉めてしまう。
日本なら「そんなことしたらお客が離れる」と言われそうですが、ドイツでは誰も驚きません。むしろ「ゆっくり休んでね」と当たり前に受け止められる文化がある。
家族で過ごすための“長い夏”
そのとき宿泊させてもらっていた友人からも印象的な出来事がありました。
お世話になったドイツ人の友人は、彼女と二人住まい。
8月になると、車にキャンプ用品を積み込み、北イタリアの湖畔へ3週間の家族旅行に出かけるのが恒例行事だそうです。
「この3週間は、家族全員が“同じ時間”を共有するための大切な投資。仕事はそのためにあるんだよ。」
私にとって衝撃だったのは、この旅行のために友人が計画的に労働時間口座を活用していることでした。
半年かけて残業を少しずつ積み立て、旅行期間に一気に使う。だから給与は減らず、休暇も増える。これが制度として成立しているのです。
ドイツの制度と文化の背景
では、なぜこんなことが可能なのか。
ポイントは「制度」と「文化」の両方がかみ合っていることです。
制度
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法定有給日数:20〜30日
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有給取得率:90%以上
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つながらない権利:休暇中は業務連絡を遮断できる法的保護
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労働時間口座制度(Arbeitszeitkonto)
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残業や超過勤務を“時間”で記録
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後日、まとめて休暇として取得可能
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金銭精算よりも時間還元を優先する
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文化
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休暇は「権利」であり「人生の投資」
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長期休暇の計画を家族や友人と年初から立てる
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休暇中は仕事から完全に離れることが美徳日本との比較
日本との比較

休暇を「貯める」発想の心理的効果
労働時間口座制度は、単なる福利厚生ではありません。
心理学的にも大きな意味があります。
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目標が明確になる:「このために頑張る」という動機付け
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家族・友人との関係性が深まる:長期の“共有体験”が生まれる
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心身の回復効果:連続休暇によるリズムのリセット
これは、フランスのバカンス文化とも共通しています。
休暇を先に計画して、それを楽しみに働く。
逆に言えば、休暇がなければ仕事のモチベーションも下がるという発想です。
日本に導入できるのか?
日本では「残業代=お金」が根強い慣習ですが、もし労働時間口座制度を導入したらどうでしょう。
たとえば、以下のような仕組みが考えられます。
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残業時間を月ごとに積み立て
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半年〜1年単位でまとめて取得可能
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特別休暇や長期休暇に充てられる
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法的に休暇中の業務連絡を制限
ただし、日本には「休むことへの罪悪感」という文化的障壁があります。
これを乗り越えるためには、制度と同時に休暇を価値あるものとして共有する職場文化が必要です。
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あなたはもし労働時間口座があったら、どんな休み方をしたいですか?
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その時間を何に使いたいですか?
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誰と過ごしますか?
行動のヒント
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半年後に取りたい休暇を、今からカレンダーに入れる
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家族や友人と「休暇計画ミーティング」をする
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休暇中は完全に仕事から離れる環境を整える
ドイツ人にとって、休暇は「ご褒美」ではなく「前提条件」です。
休暇があるからこそ、働く時間も集中できる。
もし日本でも「働く時間を減らす」のではなく「休む時間を増やす」発想が広がれば、仕事も人生ももっと豊かになるはずです。





























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