「第8回ビジネスパーソン1000人調査(休日の過ごし方編)」に見る、ビジネスパーソンの休日の過ごし方
「第8回ビジネスパーソン1000人調査(休日の過ごし方編)」に見る、ビジネスパーソンの休日の過ごし方
世間のビジネスパーソンはどんな休日を過ごしているのか、気になっている方は多いのではないでしょうか。
社会活動において、休日は心身のリフレッシュやリセットに欠かせないものです。しかし、多忙な毎日を送るビジネスパーソンにとって、限られた休日をどう過ごすかは人それぞれ。家族団らんを重視する人もいれば、趣味や自己研鑽に時間を費やす人、あるいは仕事から完全に離れてゆっくり過ごす人もいるでしょう。
今回は、第8回ビジネスパーソン1000人調査を参考に、世の中のビジネスパーソンの休日の過ごし方や、現代のビジネスパーソンが大切にしている休日の価値観について考察します。
自分の休日スタイルと比較しながら、ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスパーソンの休日の過ごし方
第8回ビジネスパーソン1000人調査によると、現代のビジネスパーソンの休日の過ごし方は、次のように分布しました(※複数回答なので合計100%ではありません)。
1.好きなこと(趣味など)に没頭する…54.5%
2.何もせずゆっくり過ごす…38.5%
3.美味しいものを食べる…34.3%
4.いつもより長く睡眠をとる…34.1%
5.仕事のことは忘れる…29.4%
6.スポーツ・散歩・野外活動など体を動かす…21.8%
7.誰かと会う・交流する…17.7%
8.その他…1.2%
このことから、大半のビジネスパーソンは、休日を「楽しむこと」に主眼を置いて過ごしていることがわかります。
出典:一般社団法人日本能率協会「第8回ビジネスパーソン1000人調査(休日の過ごし方編)」
「楽しみ」を生む心理的メカニズム
ビジネスパーソン達は、どういった意味や意義をもって休日を楽しんでいるのでしょうか。
実は「楽しみ」は、心理学において人間の感情や欲求、活力などと密接に関係していると考えられています。
それぞれどのように関係し影響し合っているのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
出典:J-STAGE「心理学から見た楽しみの意義」
ポジティブ感情とネガティブ感情
進化心理学(進化論の立場でヒトの心理学を理解する分野)では、人間の感情は「ポジティブ感情」と「ネガティブ感情」に大別できると考えられています。さらに、ネガティブ感情が「恐怖」や「不安」といった、外敵から身を守る生存戦略として発達してきた「動物的な感情」であるのに対し、ポジティブ感情は知性を磨き、友情や愛情、人との絆、時には勇気を奮い立たせる原動力となる「他の生命体と異なる人間らしい感情」と位置づけています。
「楽しみ」は典型的なポジティブ感情の一つで、人間の欲求と相互に関係していると考えられています。
マズローの欲求水準
「楽しみ」と「欲求」の関係性については、米国の心理学者であるアブラハム・マズローが提唱した「マズローの欲求水準」が参考になります。
マズローは、人間の欲求水準は以下の画像のように「人間の欲求には5つのステージがある」と定義しました。
生理的欲求とは、食事や排泄、睡眠や性欲といった動物本能的な欲求を指し、欲求の中で最下位に位置する基本的な欲求のことです。
安全の欲求は、生理的欲求が満たされた時点で人間が次に求める欲求で、文字通り「安全」を求める本能的な反応や感情のことです。たとえば事件や事故や災害などとの遭遇率を下げるための安全対策や、ハラスメントやいじめ、暴力への対策などです。
社会的欲求は、いわゆる集団欲に代表されるような、社会的な活動において孤独を忌避したがる欲求を指します。集団に所属したいという欲求や、友情や恋愛、結婚への欲求もここに該当します。ここまでは「外的欲求」です。次の段階から、より高度な「内的欲求」のステージへと進みます。
尊厳欲求は「承認欲求」とも表現され、「他者から認められたい」という感情的かつ理性的な欲求を指します。自己顕示欲の一種です。
そして最後に辿り着くのが「自己実現欲求」です。わかりやすく言うと「理想の自分であることへの欲求」です。
マズローの定義では、外的欲求は低位な欲求、内的欲求は高位な欲求とされています。
そして、マズローの欲求水準に基づいて人間の欲求が高度に満たされれば満たされるほど「楽しい」という感情が強くなる──というのが、前項で解説した「進化心理学」の基本的な考え方なのです。
現代のビジネスパーソンは、意識的にか無意識的にか、この構成に基づく手順で自身の欲求を満たし、「楽しい」と感じられる休日をデザインしていることが推測できます。
しかし、おそらく彼らは進化心理学やマズローの欲求水準を参照し、休日の予定をロジカルに設計しているわけではないはずです。
では、彼らは一体どのようにして、自分に最適な休日をデザインしているのでしょうか?
フロー状態の多幸感
ビジネスパーソンの大半が「楽しい」をベースに休日をデザインする動機として考えられるのが、「フロー状態の再現」です。
フロー状態とは「好きなことに没頭し夢中になっている状態」のことです。フロー状態にあるとき、人は現実や日常を忘れて目の前の対象物に没入し、多幸感を得ます。フロー状態では、高い創造性やひらめきの亢進が見られることが報告されており、社会活動上における生産性を向上させる原動力でもあります。
つまりビジネスパーソンは、意識的にも無意識的にも「欲求や感情の高度な充足」とともに、「実利的な学習や体験、発見」などを獲得する休日の形をデザインしていると考えられないでしょうか。
多くの人は休日にフロー体験を求めている
ビジネスパーソンに限らず、大半の人は「楽しい休日」を過ごしたいと思っていますし、「充実した休日を過ごしたい」と考えてもいるはずです。
しかし、たとえばテレビや動画、SNSのショート動画をひたすら鑑賞し続けるような行動は、一時的な快楽こそもたらすものの、欲求や感情の高度な充足はおろか、実利的な学習や体験、発見などもほとんどもたらしません。
快楽だけを追求するようなこのような状態を、進化心理学では「ジャンクフロー」と呼びます。
フロー状態が「自らが関与し、自分の能力が発揮される感動」であるのに対し、ジャンクフロー状態は「自分の能力とは関係のない体験による感動」であり、両者はまったく異なる性質のものと考えられているのです。
このように、人間の欲求や感情を細かく分析してみると、現代のビジネスパーソンが休日にどのような意味や意義を期待して過ごしているのか、イメージしやすくなりませんか?
自分に合う休日をデザインしよう
今回は、現代ビジネスパーソンの過ごし方から、ビジネスパーソンが休日に求める意味や意義、そしてそれらをどのような動機で欲しているのかまでを考察しました。
「良い休日を過ごしたなぁ」と、満たされた気分で一日を終える人と、「またしても休日を無駄にしてしまった……」と後悔しながら一日を終える人の違いが見えてくるようです。
皆さんは休日をどのように過ごしたいでしょうか?
本記事を参考に、ご自分に最適な休日をデザインしてみてください。
この記事へのコメントはありません。